keep it(返品なし返金)とは?広まる理由や悪用のリスクを徹底解説
「keep it」とは、ECサイトや通販における返品方法のひとつです。
日本語では、「返品(リターン)レス」や「返品なし返金」などと呼ばれています。
一見悪用されそうなシステムですが、Amazonやウォルマート(アメリカのスーパーマーケット)といった大規模な小売会社において導入が進んでいます。
ではなぜ、世界で「keep it」が注目されているのでしょうか?
本記事では、「keep it」が注目されている背景や悪用のリスク、メリットなどを解説していきます。
keep it(返品なし返金)とは?
「keep it」とは、返品を希望するユーザーに対して、商品は回収しないで代金だけを返す返品方法のことです。
ただし、どんな商品にも適応される訳ではなく、少額(セール対象)の商品や回収しても再販売できない商品が対象。
こういった商品を回収すると、返送費用や人件費、在庫管理コストによって、小売業者がむしろ赤字になってしまうからです。
現在、このような返品方法が、アメリカを中心に日本でも注目されています。
例えば、日本のAmazonにおいて、2021年の4月から「返品なし返金」というシステムが導入されました。
出品者は、出品している商品のカテゴリや価格帯・返品理由・返品までの日数などのルールを細かく設定し、返品希望ユーザーに対して、自動的に「keep it」を適応することが可能です。
このシステムによって、出品者は、安価な商品の返送費用や事務手続きの人件費・在庫の管理費用を抑えることができます。
また、食品デリバリーサービスのウーバーイーツでも、「keep it」が適応されています。
食事を回収したとしても、在庫として再販売できないケースが多いからです。
このように、「keep it」は新たな返品方法として、私たちの身近なサービスに導入されつつあるのです。
keep it拡大の背景
「keep it」は、アメリカを中心に急速な広がりを見せています。
アメリカの返品請負サービス「goTRG」がAmazonやウォルマートを含む小売大手を対象に行った調査によると、59%もの企業が「keep it」を採用していることが明らかになりました。
これは、昨年の調査結果である26%を大きく上回る結果です。
(出典:The Holiday eCommerce Returns Surge: Unwrapping Strategies for Retailers in 2023)
また、こうした動向の背景としては、返品需要の高まりと輸送費の高騰が考えられます。
返品需要そのものが高まっている
別の返品請負サービス「Optoro」の調査によると、2023年の年末セール期間中におけるアメリカの返品額が、日本円で25兆5300億円に達する見通し。
こちらも昨年の調査結果を28%上回る数値で、返品需要の高まりを示しています。
(出典:Reverse Logistics Revs Up as 2023 Holiday Sales Rise)
また、日本においても同様に、返品需要の高まりが見られます。
購入体験プラットフォーム「Recustomer」が自社ツール導入企業に対して行った調査では、2023年度の返品率が6.61%(前年比2.2%増)という結果になりました。
(出典:Recustomer株式会社「2023年度ECサイトの返品・交換データ調査レポート」)
新型コロナウイルスの影響により、安価な商品でもECサイトや通信販売で購入する習慣が一般的になりつつあります。
こうした現状をふまえ、顧客都合の返品を受け付ける事業者が増加。
結果として、返品コストを抑えるために「keep it」の導入が進んでいるということですね。
輸送費が高騰している
「keep it」拡大の背景として、輸送費の高騰による返品コストの増大も考えられます。
新型コロナウィルス蔓延による物流需要の高まりやドライバーの人材不足、ロシアのウクライナ進行によるエネルギー価格の高騰などが主な原因です。
例えば、ヤマト運輸は2023年4月3日から各種運賃を約10%値上げしました。
(出典:宅急便など届出運賃等の改定について)
こうした背景から、安価な商品やセール対象となった商品において、返品のコストが釣り合わなくなってきている現状がうかがえます。
keep itを導入するメリット・デメリット
ここまでの話をふまえて、小売企業が「keep it」を導入するメリット・デメリットを整理しておきます。
【メリット】
安価な商品やセール商品の輸送コストを抑えることができる
再販売できない商品を倉庫に抱えずに済む
返品処理を自動化することができる
【デメリット】
悪用される可能性がある
基本的に、「keep it」はメリットが多い返品方法といえます。
一方で、故意に返品を繰り返す悪質なユーザーに対しては、対策が必要です。
返品できる商品のルールを細かく設定するだけでなく、ユーザーの悪質な行動を検知できるシステムが必要になってくるでしょう。
また、「keep it」はユーザーにとってもメリットが多いです。
商品を返送する手間が省けますし、たとえ商品に不備があったとしても、商品はそのままで代金が返ってくるのであれば、事業者はネガティブなレビューを避けられるかもしれません。
keep itは主流の返品方法となりうるか
「keep it」は、安価な商品や配送コストの高い商品に対して、今後も拡大が進むと予想されます。
なぜなら、返品需要の高まりや輸送費の高騰は、今後も続いていくからです。
また、ECサイト・通信販売の市場そのものも拡大し続けるでしょう。
さらに、AIの発達・普及によって「返品処理の自動化」が進むと思われます。
「keep it」唯一のデメリットである悪質ユーザーの特定や対処といった課題も、AIによって容易に解決できるかもしれません。
こうした背景から、「keep it」は小売業者の利益を守る仕組みとして、積極的に導入されていくことが予想されます。
まとめ
「keep it」は、事業者にとっても顧客にとってもメリットがある返品方法です。
返品コストが釣り合わないと感じている事業会社や個人出品者の方は、ぜひ導入を検討してみてください。
なお、弊社ではリテンションボットSmashを中心に解約抑止・分析を行っています。
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株式会社Smash
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