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解約料争議におけるADRの効果:紛争​​和解へのアプローチ


ADR(裁判外紛争解決手続)は、法廷外で紛争を解決するための有効な手段として近年注目を集めています。特に解約料を巡る紛争は、契約の解除やサービスのキャンセルが関わるため、しばしば複雑な法的問題を引き起こします。

こうした状況において、ADRは当事者間での迅速かつ効果的な解決を促し、裁判所の手続きに比べてコストと時間を節約できるメリットを提供する役割を持っています。当記事では、解約料に関する具体的な事例を通じて、ADRを利用した紛争解決におけるその有効性を解析します。

ADR(裁判外紛争解決手続)とは?

ADR(Alternative Dispute Resolution:裁判外紛争解決手続)とは、裁判によらず公正中立な第三者が当事者間に入り、話し合いを通じて解決を図る手続です。

身の周りで起こる様々なトラブルの中には、裁判できちんと白黒の決着をつけたいというものもあれば、なるべく当事者同士の話し合いで解決したいというものもあります。

また、トラブルを解決したいのはやまやまだけれども、裁判をするとなると、内密にしておきたい情報まで法廷で公開しなければならないのがイヤだ、という場合もあるかもしれません。

ADRは、民事上のトラブルについて、当事者と利害関係のない公正中立な第三者が、当事者双方の言い分をよく聴きながら専門家としての知見を活かして、当事者同士の話し合いを支援し、合意による紛争解決を図るものです。

引用:政府広報オンライン法的トラブル解決には、「ADR(裁判外紛争解決手続)」 より

ADRにおける解約に関する事例3選

ADRにおける解約料に関する問題は、金銭に関わるサービスの利用に伴う紛争解決の一環として取り扱われます。

解約料に関する紛争の解決には、和解案の提示と受け入れ、それに関連する条件の交渉が含まれることが一般的で、特に双方の合意が重要です。

この章では、ADRにおける解約料に関する事例について3つご紹介します。

【事案 ①】通信販売の定期購入に関する紛争(17)(21)

1.当事者の主張
<申請人イの主張の要旨>
令和 2 年 8 月下旬、スマートフォンで見た SNS 広告に、健康・痩身そうしん目的のサプリメントが「初回特別価格 100 円」とあったため、相手方のサイトへ入り「初回 100 円モニターコース」の表示近くの「今すぐ応募する」をタップし、申し込んだ。

申込画面、確認画面、申し込み後に相手方から届いたメールのいずれにも 2 回目の購入が条件であるといった定期購入にかかる記載はなかった。

同年 9 月初旬にサプリメント 1 袋(6 粒入り)が届き、約 3 日後に請求書(400 円、手数料込み)を受け取った。その 4 日後、新たに 20 袋届いた。

納品書にはサプリメントの金額は記載がなく、注文していないと思ったものの、申込時に 2 回目以降は 1960 円との記載を見た記憶から、全部で1960 円くらいだと思いそのままにしていたが、約 3 日後に 4 万円近い金額の請求書が届き、高額で驚いた。

件商品を最初に届いた分から 1 錠飲んだところおなかを壊し、1 日置いて再度 1 錠飲むと、またおなかを壊したので、2 回目の請求書が届いた 2 日後、本件商品を飲んで体調を崩したため解約する旨を相手方にメールで通知するとともに、2 回目に届いた商品すべてと請求書を返送した。

同日、初回分の代金 400 円をコンビニエンスストアで支払った。翌日、相手方から体に合わない場合の解約期間を過ぎており、医師の診断書を出しても解約はできないとの返信があった。

弁護士による法律相談を受け、9 月下旬に相手方へ契約解除通知を送付したところ、相手方より、医師の診断書を提出すれば特別に解約に応じるとの連絡があったが、かかりつけの医師からは、診断書は簡単には出せないと言われた。

10 月中旬に相手方の債権回収業務の委任を受けているという法律事務所から受任通知書兼請求書(3 万 9500 円)が届いた。
初回分(400 円)については問題にしないので、2 回目分(3 万 9500 円)については解約し、代金の請求を取り下げてほしい。

<申請人ロの主張の要旨>
令和 2 年 11 月初旬、スマートフォンに相手方が販売するサプリメントの広告が出てきたので興味を持ちサイトを見ると「通常価格 3920 円を特別価格 100 円!」「コース 2 回目までお支払い後は解約可能です。2 回目以降もずっと 50%OFF の 1 袋当たり 1960 円(税込み)」

といった記載があり、2 回目に送られてくるのは 1 袋だと思い、初回代金の 100 円はクレジットカードで払うことにして申し込んだ。相手方から届いた注文確認メールには、支払合計 100 円、クレジット一括(手数料無料)と記載されていた。

3 日後、初回商品が届いた。その 2 日後、インターネットで検索すると、2 回目は 20 袋送られてきて 3 万 9200 円を請求されるとあった。

また、クレジット一括払い 100 円のはずが、相手方からコンビニエンスストア専用の後払い払込票が届き、請求金額が 400 円(うち手数料 300 円)だったため驚いて消費生活センターに相談した。消費生活センターによると、相手方は、診断書がない限りキャンセルは受け付けないとの回答であった 4 日後の 11 月中旬、運送会社から 2 回目の商品を届けると連絡があり、受け取り保留の電話をした。

その 2 日後、相手方から 2 回目分の払込票が届き、請求金額は 3 万 9500 円とあった。その後、初回分について「払込票の期限が近いのでひとまず 400 円支払うが、300 円は返金してください」と相手方にメールを送った上で支払った。2 回目分の商品については、運送会社に受け取り拒否の連絡をした。

相手方からは 11 月下旬に「登録されたカードでは支払いできなかったため、自動的にコンビニエンスストア後払いに切り替わった」とメールが届いた後、12 月初旬には「最終通告書」として、払込票による至急の支払いと、数日中に入金確認ができない場合法的手続を開始する旨のメールが届いた。支払った 1 回目代金(400 円)のうち手数料の 300 円を返金し、2 回目の請求(3 万 9500 円)を取り消してほしい。

<申請人イに対する相手方の主張の要旨>
・和解の仲介の手続きに協力する意思がある。
・申請人イの請求を認めない。
・利用規約に基づき定めた「返品・解約について」には、申請人イが購入したコースは初回発送日の 6 日後に 2 回目を発送する自動お届けコースであることとともにその代金を明記している。

また同コースの解約に当たっては、初回と 2 回目分の合計金額を支払い済みであることを条件としているが、商品を使用したことで体調に変化が生じた場合は、商品到着日から 10 日以内に相手方に連絡の上、医師の診断書原本を提出することで商品代金を支払わずに解約ができることとなっている。

しかし申請人イが解約の旨を連絡したのは初回商品到着日から 10 日を経過した後であり、また医師の診断書も提出されていないことから、解約は認められず、2 回目分の商品代金の支払義務があることは明らかである。

相手方としては、医師の診断書の提出が困難であるとの事情に鑑み、申請人イが診察を受けたことを証する書面(領収証等)を提出することを条件として、2 回目分の商品代金の支払いを要しないとする内容の解決を希望する。

<申請人ロに対する相手方の主張の要旨>
和解の仲介の手続に協力する意思がある。申請人ロの請求を認める。利用規約に基づき定めた「返品・解約について」では、定期コースの初回商品の支払いにおいてクレジットカードの審査が通らなかった場合、審査通過となるまで商品の発送は行わないとしているところ、本件では相手方の判断により 2 回目以降の注文の審査が通らなかった場合に準じて支払方法をコンビニエンスストア後払いに変更した上で、初回商品を発送した経緯があったた
め、利用規約に従い、申請人ロの請求を認める。

2.手続の経過と結果(和解)
期日に先立ち、申請人イより提出された医療機関受診時の領収証の写しを相手方に送付した上で、仲介委員は、期日において、当事者からそれぞれ聴取を行った。このうち、申請人ロは、支払った 1 回目代金(400 円)のうち手数料の 300 円については返金を求めない、と述べた。以上を踏まえ、仲介委員は、いずれの事案についても 2 回目購入分に関する契約を合意解除とし、相手方はその代金、手数料等一切の請求を放棄することを提案し、申請人ら、相手方とも了承したため、各申請人と相手方間で和解が成立した。

引用:国民生活センターADR の実施状況と結果概要について(令和 3 年度第 1 回、事案18)より

【事案 ②】貸衣装の解約に関する紛争

1.当事者の主張
<申請人の主張の要旨>
令和 2 年 9 月、令和 5 年に実施される娘の成人式の振り袖を借りるため、娘と一緒に相手方の店舗に出向いた。早い時期に契約を締結することで、成人式当日の着付け時間の優遇を受けられるため、この時期に契約しようと思った。振り袖一式のレンタルと写真の前撮り、着付けサービス等を含む料金 16 万 5000 円をクレジットカード一括払いで支払った。

令和 3 年 1 月、年末年始の家族の集まりで、義母が娘の振り袖一式をあつらえてくれることになったので、相手方に電話でキャンセルすると申し出た。その時初めて、キャンセルは契約日から 1 カ月以内と決めてあり、それ以降のキャンセルは認めず、返金はできないと言われた。

契約書は一切なく、「仕切り書」という見積書のような書面のみで、キャンセル規定などはなかった。消費生活センターに相談しあっせんしてもらったが、約款や契約書等の書面はない、キャンセルには応じられないという回答があり、次第に交渉できなくなった。解約を認め、返金してほしい。

<相手方の主張の要旨>
・和解の仲介の手続に協力する意思がある。
・申請人の請求を認めない。
・申請人は店舗で契約しているため、クーリング・オフは該当しない。
・申請人の娘の気持ちを配慮し、契約から 1 カ月間のキャンセル可能期間を定めているが、あくまで特例として対応できる期間である。このことは、書面にはしていないが口頭で説明している。
・今回の契約は、既に 3 カ月以上が経過しており、特例として定めた期間を大幅に過ぎている。
・今回の申し出を認めると、他の契約者もキャンセルできることになってしまうため、 申し出を受け
ることはできない。
・請求を取り下げてほしい。

2.手続の経過と結果(不調)
仲介委員は、期日において、契約の経緯等について、当事者に聴取を行った。相手方は、契約が成立した時点で、不備等がないかを確認することも含め、振り袖をメンテナンスに出すため費用が発生している、また、人気の高い振り袖から契約されていくため、キャンセルが出てしまうとその振り袖の借り手がいなくなり、機会損失が発生する、従って、「その損失
を補うために返金等は行っていない、返金した前例もない」と述べた。

また、キャンセル理由が、申請人側の一方的な事情によるものであり、現段階では譲歩の余地はないと回答した。

聴取を踏まえ仲介委員は、相手方に対し、本件では、契約から成人式当日まで 2 年半近くの期間があり、申請人が実際に解約の意思を伝えてから成人式当日までも 2 年近くの期間があるため、消費者契約法が定める平均的損害等の法的問題があること、経済産業省和装振興協議会の「和装業界の商慣行に関する指針~和装の持続的発展のために~」では、消費者との取引においては、消費者本位の商品・サービスを提供することを定めており、

また、「成人式用の振り袖等の販売・レンタルについて」では、契約時に料金全額の支払いを求めること、および早期のキャンセルに対して法外なキャンセル料を求めることは、消費者本位に反すると指摘しているという業界団体の考えを示しつつ、一部返金の和解案を提示するよう求めた。これに対して相手方は持ち帰って検討すると述べた。

後日、相手方から、社内で検討したが一部の返金であっても応じることはできないという回答があった。そのため、仲介委員は、和解が成立する見込みがないと判断し、本手続を終了させた。

引用:国民生活センターADR の実施状況と結果概要について(令和 3 年度第 1 回、事案32)より

【事案 ③】痩身治療の解約に関する紛争

1.当事者の主張
<申請人の主張の要旨>
令和 2 年 10 月、スマートフォンで相手方の広告を見て、運動も食事制限もなくダイエットできると記載があり、無料オンライン診断を予約した。予約時間に相手方からテレビ電話で通信があり、脂肪分解の仕組みや薬の効き方などについて、カウンセラーからパネル資料を使って説明があった。

その際、「私は 4 年間 1 日 1 食の生活をしているが効果があるか」と質問すると「効果がある。即効性もある」との回答だった。医師に替わり、病歴などを伝えると「このダイエットをして問題ない」と言われた。医師にも同じ質問をしたところ、「効果がある」とのことだった。医師からは糖尿病治療薬を使うとの説明はなかった。

再度カウンセラーに替わり、薬の副作用の説明があった。また 9 キロ減量したい場合は 4 カ月コースがよいと説明され、同コース(約 50 万円)を契約した。クレジットカードで 30 万円を決済し、残金約 20 万円を相手方口座に振り込んだ。数日後、同意書、確認事項等の書類とともに、薬剤入りの注射器 2 本が送付された。

ビタミンやサプリメント等も同梱されていた。確認書を見て初めて、薬剤入りの注射器が 1 本 5 万円と知るとともに、脳の満腹中枢をつかさどる受容体を刺激して食欲を抑制し満腹感を促す、糖尿病に有効な薬であると知った。また、同意書にクーリング・オフの対象外と記載されていた。

10 月末から薬剤の使用を開始し、相手方と効果などについてチャットでやりとりした。体重に変化がないと伝えると薬剤の使用量の増加を助言され、食事のカロリー制限もするよう言われたため、食事制限不要と考えて契約したことを伝えると基礎代謝を上げるよう指導された。
使用から 1 カ月後、体重は減らず、薬の追加購入の必要があると言われ、痩せにくい体質となっているため 1 日 3 食とること、運動療法を併用することを助言された。

即効性があると説明されたが減量の効果はなく、都度それを伝えてきたが、体質のせいと言われ、契約前から 1.5 キロ体重が増加する結果となった。このため、解約、返金を求める。なお、消費生活センターに相談したが解決しなかった。

<相手方の主張の要旨>
・和解の仲介の手続に協力する意思がある。
・申請人の請求を認めない。
・早期解決のため、半額を返金する。
・申請人の主張は当院の認識している事実と異なる。勧誘時については、個人差があるが 1 日目から効果を感じると伝えたが、体重が即日落ちるという趣旨ではない。また医師の診断の前に、副作用の説明やコースの案内をしている。
・クーリング・オフについては口頭で説明し、同意書の記載も申請人が読んだ上で同意している。薬剤の代金についても契約前に、アプリで確認いただき、同意書にも記載がある。
・運動については、ストレッチやウォーキング併用でより効果的になると伝えた。

2.手続の経過と結果(和解)
仲介委員は、期日において、両当事者から事情を聴取した。申請人は、4 年前に約 10 キロ減量し、それを維持するため 1 日 1 食としていたが、リバウンドしたため減量を考えたと述べた。

1 日 1 食の事情について相手方のカウンセラー、医師両方に告げたが、効果がある、と言われたので契約を決めたと述べた。仲介委員は、相手方に、本件薬剤の作用機序に照らすと、身長が約 170 センチで体重が約 60キロ、4 年間も 1 日 1 食でカロリー過多でなく食欲旺盛でもない申請人において、9 キロもの減量効果が期待できたか疑問のあること、効果が出るまでに時間がかかるといいながら、血糖値のモニタリングもせずに 3 日おきに投与量の増加をカウンセリングで指示しているなど、適切な指示であったか疑問のあることを指摘した。

また、相手方のサイトにおいて、モニタリング対象者については「全員目標達成」と大きく表示される一方、「個人差がある」等の表示が小さいことから消費者が誤解しやすいことや、「糖尿病の方でなくても全く問題ありません」との表記について問題点を指摘した。

相手方は、事前説明については、カウンセリングを 40 分程度行い、医師からも薬剤の説明等を行っており、申請人において理解の上、契約に至ったとし、サイト表示については弁護士に確認しており問題はないとの見解であると主張した。

また、仲介委員は、申請人は本件契約を締結する意思で無料カウンセリングを受けたわけではないことから「電話をかけることを請求した者」には当たらず、特定商取引法上の電話勧誘販売の適用除外には当たらないと考えられるため、相手方の同意書にある「クーリング・オフができない」との記載は不適切ではないかと指摘した。この点、相手方は、弁護士等に確認しており、本件契約が電話勧誘販売に該当しないとの見解であると主張した。

契約前に、同意書の確認を行ったか否か、糖尿病治療薬の投与であることの説明を受けたか否かの点については、双方の主張に相違があった。仲介委員は、相手方に対し、申請人は投与から約 1 カ月で解約を申し出ており、チャットのカウンセリングサービスは約 1 カ月受けていることから、契約金額の 1/4 は申請人負担とし、残りを返金することを提案した。

相手方は、投与後のカウンセリングサービス等を含めて薬剤一つ(2本入り)5 万円であり、6 本を送付済み(うち申請人は 3 本を投与済み)であることから、30 万円の費用がかかっている、早期解決のため互譲できるのは 25 万円までであると主張した。申請人がこれに応じたため、両当事者間で和解が成立した。

引用:国民生活センターADR の実施状況と結果概要について(令和 3 年度第 1 回、事案33
)より


まとめ

ADR(裁判外紛争解決手続)を利用した解約料紛争の解決は、伝統的な法廷訴訟に比べて時間とコストを節約し、サービス提供者と顧客の関係を維持することに重点を置いています。

当記事では、ADRを利用した事例として、通信販売の定期購入、貸衣装の解約、痩身治療の解約に関するケースを取り上げましたが、それぞれの事例には「契約条件の不明瞭さ、通信の欠如、消費者の期待とサービス提供者の提供内容との間のギャップ、および解約手続きの複雑さやコスト」という特有の問題を抱えています。

解約料に関する紛争の解決には、和解案の提示と受け入れ、それに関連する条件の交渉が含まれることが一般的で、特に双方の合意が重要です。

ADRを利用した紛争解決には、当事者間の合意に至るための効果的な対話と交渉を行い、双方の当事者にとって満足のいく解決をもたらすことが期待されています。

今回はADRの実際の事例をご覧いただきましたが、オンラインでの手続きが増加している中、販売だけでなく、スムーズなオンラインでの解約も必要になるでしょう。弊社は、さまざまな企業の解約手続きや分析のAIのチャットボットでご提供しています。紛争に発展しないように弊社のチャットボットが企業と購入者双方にメリットのあるコミュニケーションをご提供できます。解約手続きや解約処理に関するコスト課題などあれば、お気軽にお問い合わせください。




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