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ハキリアリが教えてくれる社会・ビジネス・マーケティングの新しい視点

皆さんはハキリアリというアリをご存知でしょうか?無数のアリが自分の身体よりも大きな葉を 持って森の中を歩いているシーンが有名と言えば、思い当たる方もいるかもしれません。葉を傘 のように持って歩く姿から、英語ではumbrella antと言われています。

実は、ハキリアリは人間以外で唯一農業をする生物です。人間がこの世に誕生したのは約3万年 前ですが、ハキリアリは5000万年以上前から農業を営み、抗生物質を作りながら持続的生活を しています。まさに、最近話題になっているサスティナブルな生活。人間よりもはるか前から、ハ キリアリはサスティナブルな生活を実現させています。

今回の記事では持続可能な社会を作り出した大先輩ハキリアリの生態から、社会やビジネス、 マーケティングについて見つめ直します。
「アリがビジネスに関係あるの?」などの疑問を持つ方や少しこじつけに感じる方もいるかもしれ ません。ですが、最後までお読みいただき、普段の価値観や仕事への考え方、社会の仕組みな どに当てはめて新しい視点を見つける参考にしてください。

1. ハキリアリとは?

ハキリアリはアマゾンを中心とした新熱帯域に生息するアリです。100万個体の集団で生活し、そ の中心は女王アリです。働きアリは巣の中の仕事を細分化して農業を営み、食べ物となるキノコ を栽培しています。キノコ畑は巣の中に数千個あり、自給自足を持続可能にしています。

2. ハキリアリが作り出した社会のルール

人間以外の生物で唯一農業を営むハキリアリには、長い年月をかけて作り出した独自の社会 ルールがあります。その中でも特に注目したい特徴を紹介し、我々人間の社会と比較・考察します。

I. 農業・抗生物質で自給自足を実現
働きアリが木の上まで登って栄養のある葉っぱを切り取り、巣に運びます。そして、巣の中で葉っぱに菌を植え付けて食料のキノコを栽培しています。

また、ハキリアリは抗生物質を作る能力もあり、作り出した抗生物質によってハキリアリや栽培しているキノコの病気を防いでいるそうです。人間が抗生物質を発見したのは1928年になるので、それよりも以前から抗生物質を利用して社会の安定性を保っていたと言えます。

抗生物質の利用には同じものを何度も利用すると耐性が付いてしまう難点がありますが、ハキリアリがどのような方法で克服しているかはまだ詳しく解明されていないようです。人間が発見できていない克服方法を実行している可能性もあります。

II. メイン通路の設置・管理で効率性アップ
ハキリアリの巣には日々の集団生活をスムーズに行うためのメイン通路が存在します。メイン通路は幅広く平らに掘られているため、多くのハキリアリが疲れずに高速で動けるように設計されています。人間の世界に例えると、高速道路の役割に似ています。

多くのアリが移動しやすいように作られたメイン通路を、ビジネスで多くのメンバーが携わる仕事やタスクに置き換えて考えてみましょう。ハキリアリのメイン通路のようにシンプルで分かりやすく設計されているでしょうか?

メインの仕事やタスクを誰もが負担なく簡単にできるよう作られていれば、時に内容や目的が変わっても同じようなプロセスで問題なく進められます。また、タスクだけでなくオフィスやみんなが使用する共有スペースが快適に使えるよう整理整頓されていれば、組織全体の効率化も図れるでしょう。

Ⅲ. 真社会性で子孫を残す
ハキリアリは真社会性生物です。真社会性とは、繁殖とそれ以外の仕事を分業し、自らは一生繁殖しない個体がいる集団のことです。女王アリが繁殖を行い、その他は働きアリとして食べ物の確保や巣作り、天敵から巣を守る役割を担当しています。子どもを多く残して生存確率を高めるために、繁殖や子育てを分業しているのです。

真社会性に関して見方を変えると、現代社会は何人かの起業家によって社会が形成されており、産業やビジネスを作り出す側とそれを支え発展させる側の2つに分けられているようにも捉えられます。日本社会を発展させるのに真社会性のような分業が適しているのか、適していないのかは言い切れませんが、ハキリアリの世界では5000万年前から真社会性で進化を遂げてきたのは事実です。

真社会性には「高度な文化が進んだ」という意味が含まれていますが、それは人間とは大きく異なるという意味の文章が多くの書物に記されていることから人間とアリの世界は異なっています。しかし、もしビジネスや社会で真社会性に近いものが進むのであれば、今以上にハキリアリを参考にできる部分は増える可能性があります。

Ⅳ. 年齢によるジョブチェンジ
ハキリアリは繁殖などを含む全ての仕事を細分化し、個体別に分担されています。それは一生決められたものではなく、年齢によって変わります。ハキリアリの寿命は半年から3年と個体差はありますが、寿命が残り半分以下になるとゴミ出しやガードマンなどあえて危険な仕事を担当するのです。

人間とは違ってハキリアリが出すゴミには病原菌が潜んでいる可能性があり、死亡率が高いことから危険な仕事に分類されています。そして、ガードマンはその名の通り、ハキリアリに卵を植え付けようとするハエから守るために戦います。

年配のアリが外に出て危険な仕事をすることで、若いアリは巣の中の卵の移動や餌やりなどの安全な仕事をして生き残る確率を上げているのです。子孫繁栄の観点だけで考えると正しい選択肢なのかもしれません。

ハキリアリは子孫繁栄のためにそれぞれの個体が無駄のない任務を全うしますが、人間には感情があるので、社会、ビジネスの全てをハキリアリと同じ様に無駄なく進めるのは不可能でしょう。しかし、これから社会を作っていく若い人材に自分の役割・立場を譲り、サポートする側にジョブチェンジすることはできるはずです。

3.ハキリアリを通して考える社会やマーケティングの新しい視点

ハキリアリと人間は農業を営む点で共通していますが、社会のルールは全く違います。ハキリアリだけでなく人間とは違う生き方をしている生物や植物を学ぶと、今までこれが当たり前だと思っていた色々な価値観も「実はこうなんじゃないか」「もっとこうした方が効率が良いのでは」という新しい気付きにつながり、違う視点が見えてきます。ビジネスも年功序列が当たり前、男性が重要な役割を担うべきなどの考えを今一度見直すと、組織力向上へのきっかけになるかもしれません。

当社でもハキリアリから得られた気付きを活かし、優秀な若い人材に早くから責任のある仕事を任せることで組織を活性化させています。具体例として、会社の代表として当時新卒入社1年目の石山が抜擢されました。「人間はアリじゃない」と賛否があるかもしれませんが、この抜擢にハキリアリの生き方が影響しているのは確かです。

次に、マーケティングについても考えてみましょう。IT技術の進化に伴いスマホが急速に普及し、ビックデータが容易に収集できるようになりました。そして、世の中が求める商品やサービスも大きく変化し、サブスクリプションサービス(サブスク)の利用が増加しています。

このような変化に対応せず、今までのマーケティング施策を何年も同じように続けている場合には注意が必要です。当たり前になっている方法であっても、自社で本当に効果が出ているのか、詳しいデータを収集・分析して見直してみましょう。時には若い人材や新卒社員などの意見に耳を傾け、企業課題解決に活かすのもいいかもしれません。

4. 最後に

今回はいつもと違ったテイストで社会やビジネス、マーケティングについて考察しました。

人間とアリの世界は全く違いますが人間よりもずっと昔からハキリアリは存在し、農業を営んで自然と共生しているのは事実です。人間とは比べ物にならないくらい長い年月をかけて進化し、独自の社会ルールを作ってきた彼らから学ぶことはあるでしょう。

人間の世界だけではなく、例えばハキリアリの生き方に視線を向けてみると、普段とは違う視点で社会を見つめ直せます。ぜひ一度注目して、組織づくりなどの参考にしてください。

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