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サブスクビジネスの解約率を改善する!リテンションテーブルと純増グラフの使い方

サブスクリプションビジネスでは、顧客の定期的な支払いが重要な収益源となりますが、顧客の解約や離脱が発生することも珍しくありません。そのため、顧客の継続利用率を把握し、解約率改善に取り組むことが必要とされています。

記事を読むメリット:
本記事ではサブスクリプションビジネスのデータ分析において広く用いられるリテンションテーブルや純増グラフを使った分析手法を解説しています。また、解約率改善に向けた施策の立案から実施へ向けたプロセスも紹介しており、ビジネスのオーナーやマーケティング担当者など、サブスクリプションビジネスに関わる全ての人にとって必読の記事となっています。

I. はじめに

リテンションとは何か

リテンションとは顧客が継続して製品やサービスを利用するように働きかけることを指します。また解約を検討している顧客を継続に繋げることも重要なリテンションとなります。顧客をリテンションすることは、新規顧客の獲得に比べて低コストで実現できるため、多くの企業がリテンションの向上に取り組んでいく必要があります。
顧客をリテンションする上で、製品やサービスを利用する顧客の解約状況を適切に把握し、それぞれに行うべきコミュニケーションをカスタマイズして実施することが重要です。今回は顧客の解約状況の分析に用いられる「リテンションテーブル」と「純増グラフ」について解説します。

リテンションテーブルと純増グラフの概要

リテンションテーブルと純増グラフはどちらもビジネスデータの分析に用いられるツールです。
リテンションテーブルは、ユーザーをサービスの初回利用日や定期購入の開始月などの期間ごとにグループ化し、それぞれの継続利用率を示す表です。
純増グラフは、月ごとや四半期ごとなどある期間ごとの新規獲得数、解約数、またそれらの差分にあたる純増数を棒グラフなどの形で視覚化したものです。
これらのツールを用いることで、ビジネスの売上成長のトレンドを視覚的に理解し、施策の改善や戦略の策定に役立てることができます。

II. リテンションテーブルの作成方法と解釈

作成手順と例

リテンションテーブルを作成するためには、まず対象とする期間を決定し、その期間ごとにグループ化されたユーザーの継続利用率を計算します。

以下は、1か月ごとにグループ化されたユーザーの継続利用率の例です。
例えば、1月にサービスの利用を開始したユーザーは400人いて、1か月後の利用者は280人だったことから、1か月後の継続率は70%となります。4か月後には1月に利用を開始したユーザーは160人までに減少し、継続利用率は40%まで落ち込むことがわかります。
また、このテーブルを縦に見ることで顧客の利用動向の大まかな傾向を分析することができます。例えば、このサービスでは1か月後の利用率がどの月に利用を開始したユーザーにおいても概ね70%となっており、1か月で30%近くの解約が発生していること、またその後においては月を追うごとに減少幅が少なくなる傾向にあることが伺えます。

$$
\begin{array}{|c|c|c|c|c|c|} \hline
月 & 新規ユーザー数 &  1ヶ月後 &  2ヶ月後 &  3ヶ月後 &  4ヶ月後 \\ \hline
1月 & 400 & 70\% & 55\% & 45\% & 40\% \\ \hline
2月 & 450 & 75\% & 60\% & 50\% & - \\ \hline
3月 & 420 & 68\% & 52\% & - & - \\ \hline
4月 & 480 & 72\% & - & - & - \\ \hline
\end{array}
$$

得られる洞察と改善策

リテンションテーブルから得られる洞察や改善策は以下のようなものがあります。

  • ユーザー数や継続率の傾向を把握し、施策の改善点を見つけることができる。

  • 異なる期間やユーザーセグメント間での継続率の比較によって、問題の特定や改善施策の優先順位の設定ができる。

  • ユーザー数や継続率の変化を予測し、将来の施策の立案に役立てることができる。

III. 純増グラフの作成方法と解釈

作成手順と例

純増グラフでは、年単位や月単位などある期間における新規獲得数と解約数を集計し、その差分である純増数をグラフにします。以下は、5ヶ月間の新規獲得数と離脱数を示した純増グラフの例です。

$$
\begin{array}{|c|c|c|c|} \hline
月 & 新規登録者数 &  解約者数 & 累計純増数 \\ \hline
1月 & 100 & 20 & 80 \\ \hline
2月 & 120 & 30 & 170 \\ \hline
3月 & 140 & 40 & 270 \\ \hline
4月 & 80 & 70 & 280 \\ \hline
5月 & 180 & 100 & 360 \\ \hline
\end{array}
$$

5ヶ月間の純増グラフの推移

得られる洞察と改善策

純増グラフから得られる洞察や改善策は以下のようなものがあります。

  • 新規獲得数や解約数の変化を把握し、施策の改善点を見つけることができる。

  • 異なる期間やユーザーセグメント間での純増数の比較によって、問題の特定や改善施策の優先順位の設定ができる。

  • 純増数の予測を行い、将来の施策の立案に役立てることができる。

IV. リテンションテーブルと純増グラフの活用事例

リテンションテーブルと純増グラフの組み合わせによって、より詳細な解析が可能となります。以下は、リテンションテーブルと純増グラフを組み合わせた解析事例です。

ある企業のサブスクリプションサービスにおける顧客継続率に関するグラフを作成し分析したところ、リテンションテーブルを作成すると、顧客の新規入会から3ヶ月後の継続率が大きく低下していることが分かりました。さらに、純増グラフを作成すると、その期間における新規獲得数も低下していることが分かりました。
この解析結果から、新規獲得に注力するマーケティング施策の見直しを行い、新たなキャンペーンの実施によって継続率の改善を図りました。

V. 解約率改善施策の実施に向けたリテンションテーブルと純増グラフの活用方法

解約率の把握と改善施策の立案方法

リテンションテーブルと純増グラフを活用して、解約率を改善するための手順は以下の通りです。

  1. リテンションテーブルを作成し、特定の期間における顧客の継続率を確認する。

  2. 純増グラフを作成し、その期間における新規獲得数と解約数の変化を確認する。

  3. リテンションテーブルと純増グラフの結果から、解約率が高い期間やユーザーセグメントを特定し、その原因を分析する。

  4. 解約率が高い期間やユーザーセグメントに対して、改善施策を実施する。

解約率改善のためのリテンションテーブルと純増グラフの使い方のポイント

解約率改善のためにリテンションテーブルと純増グラフを活用する際には、以下のポイントに注意することが重要です。

  • リテンションテーブルと純増グラフは、あくまでもデータの分析ツールであり、解釈には注意する。(売上の変動は施策によるものか、単に季節的な変動によるものか、など)

  • 継続率や純増数が低下している原因を特定するためには、詳細な分析を要する。(顧客へのアンケートなどの調査、ABテストなど)

  • リテンションテーブルや純増グラフを作成する際には、期間やグループ化の方法について事前に検討し、適切な分析結果を得ることが重要。

  • 解約率改善に取り組む際には、改善施策を実施する前に、その効果を測定するための目標値を設定し、定量的に評価を行うことが重要。

VI. まとめ

本記事では、サブスクリプションビジネスにおけるリテンションテーブルと純増グラフの活用方法について解説しました。
リテンションテーブルでは、顧客のあるサービスや商品に対する継続利用の傾向、純増グラフでは、ある期間におけるビジネスやプロジェクトの成長度合いを可視化することができます。
これらを組み合わせて解析することで、顧客の動向やサービスの収益性、将来の売上予測など幅広い示唆を得ることができ、ビジネスの成長や改善施策の立案に役立てることができます。特に、サブスクリプションビジネスの解約率改善に取り組む際には重要なツールとなります。

リテンションテーブルや純増グラフは広く一般のビジネスの現場で収集されているデータから容易に作成できるため、データ利活用の第一歩として今後多くの現場で分析の対象となることが見込まれます。

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